イベント
2021.11.01
限界芸術としてのおかんアート
10/29(金)のうめきたTalkin'About 「地域資源から始まるローカルプロジェクト」には、 11名の方にご参加いただきました。 阪神・淡路大震災で甚大な被害を受け、高齢化が進み、 地域経済が衰退している神戸市兵庫区・長田区で、 山下香さんと淡路屋の伊藤由紀さんは「下町レトロに首っ丈の会」を発足し、 地域資源を発掘し、マップを作成し、下町遠足ツアーを開催していました。 そのツアーの中で2人は、不思議な手芸作品が あちこちに展示されていることに気づきます。 そしてスナックのママを起点に、これらの作品を作っている 「おかんアーチスト」を発掘していきます。 そして彼女たちの作品を本にまとめ、 2009年には「おかんアート展」を開催しました。 当初は作品の展示に躊躇していたおかん達でしたが、 やがて主体的に展示したり、教室を開催したり、 婦人会と共催したりするようになりました。 やがて若い世代のクリエイターの出店も増え、 若手スタッフの運営チームが発足し、 全国の朝の番組で取り上げられたり、 巨匠の作品が森山直太朗氏のブックレットに取り上げられたりと、 さまざまな展開を生み出してきました。 近年は、若手スタッフが、作品だけでなく 作家に注目してもらえるような見せ方の工夫を行っており、 おかんアーチストたちも、自分の作品を展示・販売するだけでなく、 展覧会の開催を継続したい、そして若い子たちに何かしたい、 と思うようになり、和田岬の淡路屋さんの周辺で、 作品展や教室を開催するようになっています。 一方で今年8月には、「うまい棒」ともコラボし、 阪急百貨店うめだ本店にブース出展も果たしています。 https://www.facebook.com/okanart/ 山下さんたちは、発掘し、発信と交流の場を作りつつも、 おかんアーチストたちが、自分たち自身が資源だと自覚し、 活動を通じて変化していくのを、見守って来られました。 その十数年にわたるストーリーを、今回共有いただきました。 哲学者の鶴見俊介さんは、専門的芸術家によるのでなく、 非専門的芸術家によって作られ、大衆によって享受される 芸術を「限界芸術」と名付けました。 著書『限界芸術論』では、落書き、民謡、盆栽、漫才、 絵馬、花火、都々逸、マンガなどを例に論旨を展開していますが、 鶴見さんがおかんアートを知っていたら、 この列に加えていたに違いないでしょう。 おかんアート展は、来年1月には和田岬で、 また1月〜4月には、都築響一さんとコラボで、 東京・渋谷公園通りギャラリーで開催されるそうです。 ぜひどちらか、または両方に、足をお運びください。 |