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コラム

コロナウイルス都市のリ・デザイン

コロナウイルス都市のリ・デザイン


今朝、NPRで『Redesigning The COVID-19 City』
(コロナウイルス都市のリ・デザイン)と題した記事を見かけました。
https://www.npr.org/2020/04/20/839418905/opinion-redesigning-the-covid-19-city

で、とりいそぎ日本語に訳してみました。
今後こうした議論が、日本でも盛んになってくるでしょうね。


NPR 2020.4.20
『コロナウイルス都市のリ・デザイン』ロバート・ムガー&トーマス・エルマコラ

 コロナウイルスの蔓延は世界の都市の喧騒に急ブレーキをかけた。この大流行は都市の中心部がいかに伝染病の蔓延に対する防御の最前線であり、最後の砦であるかということを明らかにしたが、そこはまた、国内、そして世界の回復へとつながる鍵ともなるのだ。

 この大流行においては、特に深刻な打撃を受けた都市がある。それは我々の社会を階層化する断層線、特に収入、ジェンダー、人種、そして機会による不平等を可視化した。この数ヶ月に国のリーダーだけでなく、知事、市長によってなされた決断は、世代を越えた結果をもたらすだろう。いくらかの都市は栄え、以前よりも回復するだろうが、多くの都市は苦しみ、崩壊に至る都市もあるだろう。

 大流行の重大さは根本的に統治と関係がある。コペンハーゲンやソウル、台北のようにリーダーシップと協調があるところでは、ウイルスはより早く封じ込められている。競争と機能不全があるところでは、致死率はより高くなっている。コロナウイルスは国内の富裕層と貧困層の荒廃した社会契約の状態を明らかにしてきた。これらの失敗は重大な連鎖反応をもたらすだろう。

 あらゆる都市がロックダウンから再帰した時に、我々は近年の歴史の中で最も重要な実験を始めることになる。この賭けから得られる報酬は高くはないだろう。全世界における81%もの仕事は全面的、部分的な都市封鎖の影響を受けている。ほとんどの人々はその日暮らしをしており、他の人々と関わらずに生計を立てることができない。
 だがこれは始まりに過ぎない。我々はワクチンや強力な抗ウイルス物質ができるまで、何年もこの伝染病の影響を受けるかも知れない。

 都市が無期限のロックダウン状態に留まることが不可能だということは全ての人が頷くところだろう。では、どう対処するのが望ましいのか?短期的にはどの都市においても、マスクと検査キット、デジタル接触追跡、社会的距離などの制限が取られるだろう。対処法は都市によって、その強さと厳しさの点で様々であろう。中国では、スマートフォンによる接触追跡はすでに規準となっており、人々は感染のリスクに従って色分けされている。住民管理委員会は住民が都市に出ていくのを妨げている。

 厳重な社会的距離の手段を導入してきた多くのヨーロッパの都市では現在、注意深くデイケア施設、学校、大学、事業所を開いている、アメリカの各州では再開への歩みを検討している。アフリカ、アジア、ラテンアメリカの都市では、多くのエリアで社会的距離の手段の導入が実際上不可能だという判断から難しい選択に直面している。

 生命を救った後に、全ての市長が直面する重要な問いは、コロナウイルス時代の都市とはどういうものになるのかということだ。我々は今後数カ月、数年にわたって展開するであろう9つの潮流を特定した。

 第一に、人々が集まる場所-スポーツアリーナからショッピングモールまで-は、社会的距離のために賢く改良されているだろう。いくらかはバーチャルや拡張現実といった選択肢をすでに提供している。こうした潮流は今後加速し続けるだろう。

 第二に、オンラインショッピングへのシフトは加速するだろう。製品を販売する大多数の店舗は、コンピュータから自動車部品に至るまで、ネット空間に移っていくだろう。回復する店舗もあるだろうが、この大流行は長期化する需要と供給への打撃をサバイブし得ない店舗にとっては絶望的なものとなろう。悲しいことだが、小商いの店舗は都市のアイデンティティとキャラクターづけに資する貢献する資産であるにも関わらず、最も大きなリスクにさらされることになる。

 第三に、都市の交通手段は一連の修正を余儀なくされるだろう。一つには、公営のバス、鉄道、フェリーはこれまで以上の復活をとげることになろう。(ウーバーなどの)ライドシェアの選択肢は衛生的問題が解決されるまでは歩みを緩めるだろう。自動運転が現実のものとなり、何百万もの仕事を脅かすことになろう。より多くの人々が歩いて、または自転車に乗って仕事に行きたいと考えるようになるだろう。都市は歩行者により多くの場所を与えるようになる。それはこの危機におけるわずかな希望の兆しである。

 第四に、都市における食糧の消費、生産方法が再点検されることになろう。ジャスト・イン・タイムの世界的サプライチェーンと食肉ベースの食事への過度な依存は危険だ。都市は根本的に、地域の、そしてより持続可能な生産にについて再考している。縦方向の都市農園、あるいはより素晴らしい方向性として、屋上農園やコンテナ農園の流行が起こり得るだろう。同様に、公共空間や公園は洪水やハリケーンの脅威を和らげるとともに、食糧生産のための場所を提供するように再計画されるだろう。

 第五に、プライバシーと政治はより深く、そして多くは悪い方に影響を受けるだろう。中国は住民の健康の名のもとに大規模な監視をいち早く開発し、その専門知識を他国に売り込んでいる。コロナウイルス感染症は選挙や公衆のデモを脅して中止させるだけでなく、それに対して科学技術が差し出がましく反応することで、急速に他の人々の人権を圧することにもなりかねない。

 第六については、飛行機に乗り、車を運転し、空気を汚す人が少なくなった時に得られた「気候の分け前」が示している。インドのいくらかの都市ではヒマラヤ山脈を望むことができ、北京ではクリーンになった空気を吸っている。これは人々が新たな異常状態の中で手放したくはないものかも知れない。だが、特にそれがパリ気候協定において設定された排出量削減の目標への国際的取り組みを遅らせる可能性がある時には、大流行による環境リスクもまた存在する。C40のような都市間ネットワークはこれまで以上に重要となろう。

 第七に、ウイルスはいくらかの都市において社会的結束を強めている。居住地区のグループは高齢者やホームレス、移民を助けるために自発的にオンラインで集まっている。こうした超地域密着の組織は、連邦政府や州政府の度重なる失敗のもとで活発になっている。鼓舞され、より多くの声を得ることで、彼らは都市再生において重要な役割を果たすことになろう。

 第八に、コロナウイルスはすでに進行していたいくらかの社会的潮流を加速している。それは構造化されたオフィス環境からよりフレキシブルな、バーチャルの、在宅での執務環境への変化の促進だ。オフィススペース需要の減少は都市に、特に人口密度という点でダメージを与えるだろう。また、多くの都市において孤独と精神疾患の蔓延が注目を集めるようになっており、適切なサービスや団結を提供する取り組みが大いになされるだろう。

 これらのコロナウイルスによる潮流は、デジタルの接続性とサイバーセキュリティ、人々が住み、働く居住地域の機能を強めつつある。それらは都市がそのグランドデザインの再構築を求められていることを明確に示している。我々は危機への反応と、社会と環境のための長期的で公平な利益を融合した新たな都市デザインの基準を目の当たりにすると期待できるだろう。「ドーナツ経済学」に基づく都市計画モデルへと向かうアムステルダムの例は際立っている。

 世界の都市居住者の人口が半数を超えることから、この大流行とその先の課題の解決を図ることは重要だ。都市はつねに危機の後に発展の可能性を示してきた。未来が最初に起こるのは都市である、と人々が言うのももっともだ。もし今、市長や企業のリーダー、市民起業家が正しい決断をすれば、多くの都市はこれまで以上の回復を遂げるであろう。最も成功する都市は、不平等を求める急進的な不寛容をよそに、回復力と持続可能性、経済の再生という原則をその中にデザインすることになろう。


ロバート・ムガー
 SecDev Group社長、Igarape Instituteの共同創立者。イアン・ゴールディンと共同執筆した近著「Terra Incognita」では、我々の世界が直面している全体的脅威に焦点を当てている。

トーマス・エルマコラ
 都市未来学者、再生計画立案者、科学技術投資家、「再コード化される都市:都市の未来を共創する」共同執筆者。

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