本の紹介
2020.05.08
『都市から見る世界史』 ジョエル・コトキン 著 庭田よう子 訳
アメリカの都市研究者のジョエル・コトキン氏が、世界史を俯瞰し、これまでに繁栄を謳歌してきた都市の盛衰について、コンパクトにまとめた一冊です。
メソポタミアやギリシアの都市国家、アレクサンドリアやローマといった世界帝国の首都、大航海時代の交易都市、産業革命期の工業都市、
文化と娯楽が栄える現代の都市、一方で第三世界に広がるスラムを抱えた巨大都市などを、精神的・政治的・経済的機能から分析しています。
コトキン氏は、都市が総合的に成功してきた理由として、
「神聖な場所であること」
「安全性を与え力を示す能力があること」
「商業により活性化されること」
の3点を挙げています。
また、近代に郊外が誕生したことで、都市の新たな可能性が生まれたことについても触れています。
(彼は郊外の成長を、今後の世界の趨勢と見ています)
「都市は、大衆の複雑な性質をまとめ、活気を与える役割を果たす、神聖な場を支配することによってのみ栄えることができる。五千年以上もの間、人間にとって都市は、政治的、物質的進歩のための公共の広場として役立ってきた。人類の未来が今後何世紀にもわたり形成される場所は、神聖性と安全性と活気あふれる場の合流地点という古代からの役割を担う、都市にこそあるのだ。」