本の紹介
2020.06.30
『神戸 闇市からの復興』村上しほり著
『神戸 闇市からの復興』村上しほり著 慶應義塾大学出版会
この本は、著者の村上しほりさんが神戸大学大学院人間発達環境学研究科に提出した博士論文を大幅に改稿して書かれています。描かれているのは第二次世界大戦後の神戸に現れた「闇市」の発生から衰退までの軌跡と、闇市が姿を変えて新たな商業空間として根付くまでの変容過程。村上さんは、戦後まもない時期やGHQ占領下の神戸の民衆の生活について、当時の新聞記事を調べ上げて再現的に描き出し、そこで見えてきた諸相について他史料と照合し、当時を知る人々へのインタビューを重ねることで、その実態を実証的に明らかにしています。
GHQによる接収や管理施策はどのようなものだったのか、闇市にはどんな物売りがいて、どういう勢力によって仕切られていたのか、闇市に対する取り締まりはどのように進められたか、国際マーケットやジャンジャン横丁など、露店撤去後に生まれた新たなマーケットについて、神戸の都市空間がその後どのように変容を遂げてきたのかなど、時代が進むにつれて細部が忘れ去られてしまっていた神戸の記憶を、いきいきと甦らせた貴重な資料です。