国境を越えた「人の移動」のことを考える
3/1(火)のうめきたTalkin'About「『人の移動』をめぐる20世紀ヨーロッパ史」には、
18名の方にお集まりいただきました。
阪南大学経済学部准教授・定藤博子さんは、
両大戦間期フランスにおけるポーランド移民労働者を
研究テーマとされています。
16世紀半ばに成立したポーランド・リトアニア共和国は、
現在のポーランドからリトアニア、ベラルーシ、
ウクライナに広がる国土を有しましたが、
ロシア、プロイセン、オーストリアによる分割により、
1795年には国土が消滅しています。
第一次大戦終結の後にポーランドは独立するも、
1939年にドイツとソ連の2か国に東西分割され、消滅。
第二次大戦終戦によりポーランド人民共和国となりました。
第一次大戦後に、123年ぶりに国家が復興するも、
戦争による破壊や混乱で経済活動が十分ではなく、
多くのポーランド人は仕事を求めてフランスに渡りました。
そして多くの男性が炭鉱、特に坑内での労働に従事したそうです。
そこに処遇上の格差や差別はあったのかを、
定藤さんは実証的に調べておられます。
人が国境を越えて移動するという現象は、
昔から現在に至るまで、世界のあちこちで見られます。
そこには強制労働や戦乱・災害による難民、
仕事を求めての移動、国による海外移住促進、
旅行、留学、巡礼など、さまざまな動機と背景があります。
ポーランドとフランスの場合には、
労働力が不足していたフランスが、
労働力過剰となっていポーランドからの移民を受け入れ、
差別的待遇は実は少なかったという麗しい話でしたが、
戦乱や災害などの理由で、求められていなくても
国境を越えていかないといけない人たちが存在し、
彼らを寛容に受け入れ、彼らの未来を創っていく道筋を
考えざるを得ない今の世界情勢に対する思いが、
参加者のそれぞれの中に響いていたように思います。
資料にある赤枠は第一次大戦後、青枠は第二次大戦後の
ポーランドの国土を示しています。