本の紹介
2016.04.11
「断片的なものの社会学」岸政彦著
マイノリティの生活史を研究テーマにする著者は、
一般の人が書いたブログや聞き取り調査で得られた
社会学の範疇に収めることの難しい
しかし魅力的な人生の断片的な語りの数々を、
自身のエピソードとともに紹介しています。
「私たちは、たいした才能もなく、金持ちでもなく、
完全な肉体でもない、このしょうもない自分というものと
死ぬまで付き合っていかなくてはならない。」
「ここにはいかなる意味もない。」
マジョリティの立場にいる人間は、
こうしたエピソードを、無自覚のうちに
暴力的に意味や物語に回収してしまうことがある。
そこからいかに逃れることができるか
そしてエピソードそのものの魅力を
いかに解像度を落とさずに伝えることができるか。
この本は、そういう書かれ方をしています。
とても刺激的な本でした。